うちの店のレジの大半がお支払いセルフレジになった。
導入してしばらく経つけどまだまだ不慣れな人が多い。
高齢の男女が戸惑っていた。
「あぁぁわかんねーよ!」
70代くらいの男性が支払いをしようとしていて嘆いていた。
かたわらにカートをつかんでる腰の曲がったさらに高齢の女性。
親子かしら。
近くに寄ってって声をかける。
「お客様、まず画面を見ていただいて、、」
画面をくるーっと指をさす。
「ああ、嫌な世の中になっちまった。」
自動で払うのは初めて中の初めてって感じ。
こんなことしたくないと言わんばかり。
慌てふためいている。
「こちらをタッチしていただいて、、」
「日本語じゃねーからわかんねーよ、あー、まったくわからない!」
視線が画面を見ていない。
どうしたらいいのかわからなくて混乱している。
「お客様、見てください、日本語ですよ、大丈夫です。」
「俺は中国人だから何もわからない、あーわかんねぇ!」
すごく日本人だと思う。
これは冗談言っても大丈夫そうなタイプです。
「ずいぶん日本語お上手ですねー」
「俺は中国人だから~」
わかったわかった。
「現金ってところを押したらお金を入れてください。」
身振り手振りで誘導。
このボタンを押してって言ってるのになかなか押してくれない。
もう全部やってくれって言ってる。
でも私も押さない。
自分でやってもらわなくちゃ意味がないから。
がんばれー。
強要したら渋々押してくれた。
「お札はこちらです、はい、もうちょっとぐいーっと入れて、、はい!いいです。」
「なんでこんな世の中になっちまったんだ…」
まだ嘆いている。
「年を取ると初めてのことがなくなりますから、たまには刺激になっていいと思いますよ。」
「お前、医者みたいなこと言うな~。」
だいぶ落ち着いてきた。
「はい、お釣りが出たらもらってってくださいね、レシートが出たらお会計終わりでーす。」
「おー。」
レシート受け取る。
名札をしげしげ眺められる。
名札に触ってクイッと自分に向ける。
「三杉さんね。」
なんかやだなぁ。
「名前覚えたからね、また来るからよろしくな。」
悪い方向じゃなかった。
「本当に今度までに覚えてます―?忘れません??」
「覚えた覚えた。」
「私も覚えた、三杉さんね。三杉が親戚にいるから忘れない。」
お母さまにも覚えられた。
和やかだった。