今日は暇だなー。
閉店から1時間くらい前。
会計中の隣のレジにお客さんが並んだ。
私のレジには誰もいない。
そのお客さんと目が合う。
「空いてます?」って言われて「空いてますよ。」と声をかける。
こちらのレジに向かい入れる。「いらっしゃいませー。」
発泡酒2本のお会計。
体格のいい100kgありそうな中年男性。
大きなスーツケースを転がしていた。彼は入らなそうだけど人が入りそうなくらい大きなスーツケースだ。
うちの店で買った感じじゃない。でも新しい感じ。中には重いものは入ってなさそうに見えた。
お会計終わってから話しかけられた。
「○○(地名)っていい所ですねー。」
スムーズに言葉が出てこない感じでしゃべり方がたどたどしかった。
○○はここから車で30分くらい。ちょっと遠い。○○なんてよく知らない。行ったことないしここら辺の人間じゃないから良さなんてわからない。
当たり障りなく「全国でも有名な観光地ですもんねー。」とか言った。
肩から掛けてたショルダーバッグに発泡酒をそのまま詰めて帰っていった。
とてつもなく暇だったので後ろレジの同僚と前のレジの仲のいい同僚と軽口をたたく。
「すごい大きなスーツケースだったねー。人が入りそう。軽そうだったからまだ詰められてないね。」ニヤリ。
「うちで買ったのかなー?」
「うちで買った感じじゃなかったよ。うちではあんな大きなの売ってないでしょ。」
「△△さんとか三杉さんなら入りそうだね。」
などと会話。
今日は安倍晋三さんの話ばっかりしてた。
早番の人はこのニュースを知らないだろうと思って話しかけても、大体知っていた。
お客さんが教えてくれるらしい。やっぱり重大ニュースだからみんな人に話したいんだね。
その後安倍晋三さんが亡くなったって口コミで知らされる。情報が遮断されてる仕事でも情報は入ってくるもんだねー。
仕事が終わってロッカーで着替えながら軽口の続き。
「ねぇねぇ、スーツケースの人に帰りがけに話しかけられたんだけど。アリバイ作りに利用されたかもしれない。これから犯行に及んで、この時間にはスーパーにいましたよってさー。」
「はいはい。」
「スーツケース軽かったからこれから死体を詰めるんだよ。」
「ドラマの見過ぎだから。」
「数か月後、スーツケースに入ってる死体が見つかって、「あーそういえば三杉さんがこんなこと話してたな。」って思い出すよ。防犯カメラで確認とかしてさ、警察に話すときに覚えておいてね。」
などと会話。
搬入口から出て従業員駐車場に向かって暗闇を2人で歩いていた。
道路を挟んで向かい側のお店の駐車場にスーツケースを持った男がいた。
「さっきのスーツケースの人じゃない?」
え!??
なんでいるの?
こわっ!!
店は閉店してるから駐車場は暗い。
車は1台も止まってない。
駐車場の端っこにいた男は歩き出した。
フェンスの隙間の出入り口からスッと出てくる。
道路を挟んで私たちと一緒に平行に歩き出した。
ついてきてる???
小さな声でひそひそ話。
「なんか怖いんだけど。」
「後ろから散弾銃で撃たれるかもしれない。」
背中がぞくぞくする。
暗闇で誰かからつけられている恐怖。
スーツケースに詰められるかもしれない。
このまま真っすぐ歩いていくと従業員駐車場に着く。
「怖いから遠回りして帰ろう。あっち行こう。」
「そうしよう。」
右へ曲がる。
おしゃべりな2人なのになんとなく無言。
少し進んだあと振り返る。
姿が見えない。
ついてきてはないのか。
よかった。
途切れていた会話が再開。
「怖かったねー。」
「なんとなく車を特定されたくないよね。」
「△△さん詰められるかもよ。」
「いや、三杉さんでしょ。私はレジしてないし。」
恐怖が落ち着いてきた。
従業員駐車場に着いて仲いい同僚と別れて車に乗る。
スーツケースの男は従業員駐車場を通り過ぎて行った。
そのまま歩いてたら背後をとられていた。
駅のほうに歩いていくのを目で追った。
思い過ごしだったのか。
よかった。
ってか閉店してしばらく経ってる。
見たのは1時間半前。
なんで暗闇に1人でいたんだろう。
旅行者だろうし車がないのに駐車場にいる意味がわからない。
店舗出入口とも離れてるし。
ってことで皆さん。
私に何かあったらスーツケースの男を疑って下さい。
なんとなく母にも話をした。
そしたら思い出したように「そういえば昨日お父さんが寝た後。しばらくして、何時だったかなー?パトカーが4台通り過ぎて行った。」とか言う。
それは全然関係ないと思うよ。