昨日→両親のスマホデビュー
朝方。布団の中。
どこかでスマホが鳴っている。
ティロティロティロ…ティロティロティロ…
ティロティロティロ…ティロティロティロ…ティロティロティロ………
止まらない。
着信音が両方とも同じなのでどっちのが鳴ってるのかわからない。
もー何なのー、出ないのー??
うるさいなー。
母の怒鳴り声が遠くから聞こえる。
「・・!!・・!!!」
「自分で買うって言ったんでしょ!それなら買わなきゃいいじゃん!」
なにやら揉めてるなぁ。
お昼ごはんの時間。
「なに騒いでたの?」
「お父さんがね、電話かけられなくて朝5時半から鳴らしてるんだよ。なんでこんなのにしたんだって言うから。自分がこれと(母のと)同じのでいいって言ったくせに!」
ご立腹です。
「電話かけることもできないんだよ!」
「まったくなんでこんな簡単なことができないかねぇー!?」
おいおいおい。
「あんたもわかんない側でしょうよ、優しく教えてやればいいじゃん。」
怒鳴るなよ、うるさいなー。
出勤前で時間ないけどもう一度おさらいしようか。
「お父さん、家にかけてみて。」
「んー」
スマホを手に取り、緑の受話器ボタンをおす。
ここでアドレスが並ぶはずだけどアドレスの検索窓が開いている。タッチキーがなぜか開いている。アドレス検索しようとしてる。
私にもこれを消す方法がわからない。一回ホーム画面へ戻る。やり直し。
緑のボタン押す。おきに入りに入れたので自宅の番号は上のほうに出る。
「はい、自宅をチョンってして。」
チョン。
「チョンってしたら左側の緑の受話器ボタンをチョンってして。」
チョン。
かかった。出る。
「はい、三杉です、こんにちわー。」
見てるからもう一回自分でやってみて。はい、大丈夫。
もう自分でかけられそうです。アドレスがこれからも開けるかは課題です。
「今度はお父さんにかけるよ、出てねー。」
ティロティロティロ…
デジャブ。
鳴っているスマホを耳に当てています。
「おお?」
昨日と全く同じです。
「お父さん画面見て、左の緑ボタン押して。」
チョン。
繋がった。スワイプじゃなくてもいけるのか?よくわかんないなぁ。
切られた。赤いボタン押したでしょー?切らないでよー。
「もう1回かけるよ。」
子機をもって姿が見えない場所へ。様子をみないで自分で受けさせよう。近くにいないほうが成長できるはず。
ティロティロティロ…
繋がる。
『もしもし?もしもし?』
『聞こえる―?』
『あぁ?』
『もしもし?』
訳が分からなくなって近くに寄ってくる。
もー、近くに寄ってきたら意味ないでしょ!あっち行って!
耳にちゃんと当ててないのかなー。当てる場所間違ってる?
間違ってないなぁ。少しずれたって聞こえるよねー。
「もう一回かけるよ」
繋がる。
『もしもし?もしもし?』
『全然聞こえねーよ。』
『お父さん、今度は赤いボタン押して電話切ってみて。』
『なんだって?』
『右の赤いボタン押して電話切ってみて―。』
『なにー?』
「なにー?」
近寄ってくる。もー。
あーそうか。お父さん耳が遠いからね。
「音量大きくしよう。」
サイドのボタンを押して受話の音を最大音量にする。これでよし。
「はい、もう一回ね。」
かける。出る。
『聞こえる―?』
『聞こえるよー。』
『はい、よかったねー。』
赤いボタン押して切ってもらう。切れた。よしよし。
普段からもっとわからないお年寄りと接してるからお父さんなんてかわいいもんだ。
丁寧な私の一連の流れを見ていた母がちょっと落ち着いた。
私もかけるから出てみて―、とかやってた。
やべー時間がない。遅刻するかも。慌てて支度。
あれ?父がいない。母に尋ねる。
「どこいったの?」
「パチンコ。」
何かわかんないけどイラっとした。
なんで簡単スマホにしなかったんだろう。
まったくー。
仕事終わりに弟からショートメールが来ていた。
母に試しにショートメールを送ったけど返信がないそう。
おそらく来てることも気づいてないんじゃないかな。
アプリの右上の赤い丸だけじゃわかりづらいもんね。携帯みたいにドンと通知が画面に出ないのかなー?
帰ってから母に伝える。
やっぱり気付いてなかった。
「ここに赤い印が出るとメールが来てるってことだからね。」
わかるのかなー、こんな小さい赤い丸。
ショートメールどれ?この吹き出しのマークだよ、青いの。
ショートメールを認識するところからか。
ショートメールのアプリが2番目のページにある。これじゃわかりづらい。トップ画面に移動する。
ついでにDなんちゃらとか、Googleなんちゃらとか全部トップページから2番目のページに動かす。消すと怖いので移動だけしとこう。
ギャラリーはいるかな、カメラも残しとこう。アラームは昨日使ってた。
使いそうな物だけ集めた。トップページはシンプルになった。これならわかりやすかろう。
父のも同様に勝手に動かす。時間がわかるように時計も設定してみる。
簡単スマホみたいに「自宅、妻、娘の電話番号」を表示したかったけど出来なさそうだなー。う~ん。
着信音も変えようよ。父のは前にしてた黒電話っぽいのにしとこう。
母も一生懸命変えていた。私これにしよう、と嬉しそう。
弟にメール返した?
どうやってやるの?
あーそこからか。+メッセージを開いて。
この文字入れるところ、白い枠をチョンってして。キーが出てくる。タイピング不慣れ。タッチパネルに苦戦。
このバッテンマークを押すと前の1文字が消えるからね。このチカチカしてる棒あるじゃん、この1つ前の文字ね。1文字消すのも容易じゃない。
消したいところに棒が来ない。押す、押す、右ボタン押したり、左ボタン押したり。ああ、そこじゃない。消したくないものまで消えていく。あああー。
時間かかって打ち終わった。
そしたらこの青いボタン(紙飛行機)をおす。ぴゅー。
「送られたの?」
「送れたよ。」
昔からメールは送れてたので時間をかければできそう。
ショートメール開くと以前開いたページが出て混乱するけど、戻ればこのページに行けるからね。ここで送りたい相手を選んで送ってね。
左側の言葉が相手のほうので、右側がお母さんが送った方ね。
Google検索窓があるので検索するかなー。
文字入れるの面倒でしょ、こうやると文字が入ってくよ。
検索されて検索結果を音声でしゃべって教えてくれた。おーすげー。
あ、もしかしたらメールも音声でいけるかもよ。ショートメール開く。
やっぱり、マイクマークがある。いけそう。
試しに私にメール送ってみたら。
「やってやって」
青いマーク押す、送信!「やってやって」が送られた。
2、3回やってもらう。このマイクマークだよ。おすと色が変わるじゃん。そしたら話して。おー。いいねー。
「ちょっときつい言い方しちゃったやつも送られちゃうね。」
んん?
紙飛行機マークを押さなきゃ送られないから、押す前に消せば大丈夫だよ。
「そうかー。」
わかってんのかなー。
今日のスマホ教室は終わりです。